夕飯に大根の煮物を作ったのに、「なんか苦い…」と家族の反応がいまいち。
私も一度、せっかく丁寧に煮込んだのにその味にがっかりしたことがあります。実はこの“苦さ”には、下処理や品種、調理法など、いくつかの原因があるんです。
この記事では、大根の煮物が苦くなる理由と、家庭でできる簡単な対策を紹介します。もう二度と「失敗した…」と感じないように、今日からおいしい煮物が作れるようになりましょう。
目次
大根の煮物が苦くなる主な理由
中心部にある「辛味成分」が残っている
大根の苦味や辛味の正体は、イソチオシアネートという揮発性の辛味成分です。これは大根が持つ「防御成分」のようなもので、外敵(虫や細菌)から身を守るために生成されるもの。切ったりすりおろしたりすることで細胞が壊れ、酵素と反応してこの辛味が発生します。
特に、根の先端部分(細い方)ほどこの成分が多く含まれており、加熱しても完全には抜けません。 そのため、煮物に使う場合は「葉に近い上部」を使うのがポイント。上の方は甘みがあり、煮てもやわらかく味がしみやすいので、子どもにも食べやすい仕上がりになります。
また、イソチオシアネートは熱によってある程度は分解されますが、煮る時間が短いと残りやすく、苦味として感じやすくなります。しっかり中心まで火を通すことも大切です。
旬や保存状態による影響
大根は季節によって味が大きく変わる野菜です。
冬に収穫される大根は寒さで糖分が増し、自然と甘みが引き立ちます。 一方で、夏場や秋口の大根は水分が多く、辛味成分が残りやすい性質を持っています。
また、保存方法にも注意が必要です。冷蔵庫で長く置いておくと、水分が抜けてスカスカになり、繊維も硬くなってしまいます。こうなると、煮ても味が染み込みにくく、えぐみや苦味を強く感じることがあります。
保存する際は、新聞紙に包んで立てた状態で冷暗所に置くのがおすすめ。もし冷蔵庫に入れる場合は、切り口にラップをして乾燥を防ぐことで、鮮度と甘みを保てます。
下ゆでをしていない
大根の煮物が苦くなる一番多い原因が、下ゆでを省略していることです。
生のまま煮ると、イソチオシアネートなどの辛味成分やアクが煮汁に溶け出して、全体に苦味が広がってしまいます。特に煮汁を使い回すような料理(おでんや煮しめなど)では、他の具材まで苦味が移ることも。
対策としては、「米のとぎ汁」や「少量の米」を入れて下ゆで」するのが効果的です。とぎ汁に含まれるデンプンがアクを吸着し、同時に大根の繊維をやわらかくしてくれます。
下ゆでは水から始めて、沸騰後10〜15分ほど。竹串がスッと通るくらいが目安です。そのあと、水で軽く洗ってから本煮に使うと、苦味が驚くほどやわらぎます。
私も以前、忙しさから下ゆでを省いたときに「なんだか後味が苦い…」と感じたことがありました。きちんと下ゆでするようにしてからは、「大根ってこんなに甘かったの?」と家族が驚くほど味が変わったので、手間を惜しまずにやる価値があります。
苦くならないための下処理のコツ
1. 面取りをしてから下ゆでする
大根は皮をやや厚め(約5mm)にむくと、筋っぽい外側の繊維とえぐみを避けられます。輪切りは2〜3cm厚でそろえると火通りが均一に。角をぐるりと面取りしておくと煮崩れが減り、表面がなめらかになって口当たりもアップします。私は中心まで味が入るよう、片面に深さ3〜5mmの十字の隠し包丁を入れることも。
下ゆでは“水から”スタートが基本。冷たい状態からゆっくり温度を上げることで辛味成分が抜けやすくなります。沸騰後は弱めの中火で10〜15分、竹串がスッと通る手前で止めると、のちの本煮で味が入りやすくなります。
2. 米のとぎ汁でゆでる
昔ながらの方法ですが理にかなっています。とぎ汁のデンプンがアクを吸着し、繊維をやわらかくしてくれるから。とぎ汁がない日は、水1Lに米大さじ1(または米粉・小麦粉小さじ2)を溶かすだけで代用できます。
鍋に大根がしっかり浸かる量のとぎ汁を入れ、落としぶたをしてコトコト。強火でグラグラ煮立てると表面が荒れ、えぐみが残りやすいので要注意。香りが穏やかになり、竹串が7〜8割通るくらいで火を止めます。下ゆでの段階で完全に柔らかくしないのがコツです。
3. 下ゆでした後はしっかり水で洗う
火を止めたらザルに上げ、表面のぬめりや余分なデンプンを流水でさっと洗い流すだけで苦味・えぐみがぐっと減ります。ここで長く水にさらしすぎると旨味まで抜けるので10〜20秒でOK。
このあと一度しっかり湯気を飛ばす(粗熱を取る)と、細胞が落ち着き本煮で味が入りやすくなります。すぐ煮ない場合は、清潔な水に浸して冷蔵庫で半日ほど保存可能。翌日に使うなら水を一度替えてから本煮へ。
調理中の工夫で苦味をやわらげる
味付けの順番に注意する
煮物は“さしすせそ(砂糖→塩→酢→しょうゆ→みそ)”が基本。私はだしと下ゆでした大根を入れて温まったら、まず砂糖と酒(各大さじ1〜1.5/だし400〜500ml目安)を加え、10分ほど含ませます。次にみりんを入れてさらに5〜10分。最後にしょうゆを少量ずつ味を見ながら加えるのが失敗しないコツ。早い段階でしょっぱい調味料を入れると表面が締まり、苦味が中に残りやすくなります。仕上げにひとつまみの塩で甘みを引き立てると味が決まります。
弱火でじっくり煮る
ぐらぐら強火は煮崩れとえぐみの原因。鍋底から小さな泡が“ポコポコ”上がるくらいの弱火で、落としぶた(なければクッキングシート)を使って20〜30分コトコト。途中で上下を返して均一に味を含ませます。いったん火を止めて冷ましてから再加熱すると味がぐっと入って苦味が落ち着くので、夕方に一度煮て、食べる直前に温め直すのがわが家の定番です。
だしをしっかり使う
だしの旨味は苦味を包み込み、味に奥行きを出してくれます。昆布だし(昆布10cmを水500mlに30分浸す→弱火で温め、沸騰前に昆布を取り出す)に、かつお節(6〜8g)を1〜2分浸してこすだけで十分おいしい。時間がない日は出汁パックや顆粒だしでもOKですが、だしはやや濃いめにとってから調味料を足すと失敗しにくいです。生姜の薄切りや少量の酒を加えると、青臭さが抜けて味がまとまります。
苦くなってしまったときのリカバリー方法
冷ましてから再加熱する
火を止めて落としぶたをしたまま30分〜1時間ほど置くと、温度が下がる過程で味が内側へ移動していきます。「冷ます→温め直す」を1セットにすると、苦味がまろやかになり味しみも段違い。翌日に食べる予定なら、粗熱を取ってから清潔な容器に移し、冷蔵庫で保存。温め直しは弱火でゆっくりが鉄則です。
具材を追加してバランスを取る
だしが再び出る具材を足すと、苦味の角が取れて全体の調和が生まれます。にんじん・こんにゃく・厚揚げ・手羽元や鶏もも・ゆで卵は相性抜群。私はいったん煮汁をお玉1〜2杯分捨て、同量の新しいだしを加えてから具材を投入します。うま味を足して薄める“置き換え”が、手早く味を立て直すコツ。10〜15分コトコトで十分です。
みりんやはちみつを少し足す
甘みでごまかすのではなく、コクで包み込むイメージ。だし400〜500mlに対して、みりん小さじ1〜2、はちみつ小さじ1/2〜1を目安に加え、数分静かに煮ます。少量ずつ味見しながら入れることが失敗しない最大のポイント。甘くなりすぎたら塩ひとつまみで輪郭を戻すとバランスが整います。仕上げに生姜薄切りや柚子皮を少し添えると、後味がすっきり。
私の体験談|子どもの一言で気づいた「下処理の大切さ」
ある日の夕食、大根の煮物を食卓に出したときのこと。
「ちょっと苦いね」と息子がぽつりと一言。
その瞬間、胸の中に小さな“ドキッ”が走りました。というのも、その日は仕事が立て込み、時間に追われていて、いつもしている下ゆでの工程を省略してしまっていたんです。
見た目はいつも通りでも、味には正直に出てしまうんですね。家族の何気ない言葉に、「手間を惜しむと、やっぱり味に出るんだな」と実感しました。料理って、丁寧に作ることそのものが“おいしさ”なんだと、改めて思い知らされた瞬間でした。
翌日、反省を込めて米のとぎ汁でじっくり下ゆでし、弱火でコトコト煮込んでみました。夕食の食卓で息子が一口食べて、「今日の大根、すっごくおいしい!」と満面の笑顔。
その言葉を聞いた瞬間、心の中まで温かくなって、疲れがふっと消えました。
家族の“おいしい”は、何よりも大きなご褒美。
それ以来、どんなに忙しい日でも下処理だけはきちんとやるようにしています。たったひと手間ですが、その積み重ねが、家族の笑顔と「また食べたいね」の言葉につながっている気がします。
まとめ|手間ひとつで、大根の煮物はぐっとおいしくなる
大根の煮物が苦くなるのは、下処理や火加減のちょっとした違いが原因です。
面取りや下ゆで、だしの工夫をするだけで、驚くほど味が変わります。
「今日は家族においしいって言ってもらいたい」と思ったら、ぜひひと手間かけてみてください。
そのひと手間が、食卓の笑顔と“また作ってね”の言葉につながります。














